欲望の上限

 発表会費の締め切りが迫っているので、私は生徒の母親に電話した。
 いくつかやりとりがあって 間に合わないと困るので、持ってきていただけるようにお願いすると、相手は黙ってる。
 電話口で沈黙されると どうしようと思う。
 仕方なく「じゃあ、私立て替えておきます。」と言うしかなかった。

 この母親はこういう時、はっきりしゃべらない。
 困らせて相手が動くのを待つ。上手いよね。




 その頃生徒は グループと個人レッスン併用のコースに入ってた。
 当然、月謝は2倍かかる。
 発表会は個人の方は自由参加だったけど、出演していた。
 「度胸を付けさせたい。」母親はそう言っていた。
 個人出演は度胸が試される。
 だからグループだけでなく 両方出演させて子供にたくさんの経験をさせたい。そういう強い願いが感じ取れた。

 生徒がレッスンを嫌がって、どうしようもない時期だった。
 お母さんだけが熱心だった。


 もちろん、参加費用も倍近くかかることになる。

 その頃、社宅にお住まいで(妹さんもいるし、下の弟さんはまだ小さい。)家計の中から教育費に使える分は全てつぎ込んでいた。
 そんな感じに見て取れた。
 何かをあきらめるという発想は無かったのかもしれない。


 あれも これも ママは欲張り


 それ以降もパターンは同じ。変わらない。

 これは私の推測だけど、たぶん夫の収入が増えていくのと比例して、支出の上限ギリギリいっぱいまで、欲しい物を手に入れていったのではないかと。
 夫の収入がいくら増えていっても、支出の上限ギリギリまでローンを組むと、どこまでいっても余裕が無い。
 だからいつも、いっぱいいっぱいだったんじゃないか?


 なので教材費に回って来ない。


 高額な楽器、一戸建て、4WDの大型車、習い事の月謝と将来の大学資金…。
 どんな生活をされても自由だけど、先生が立て替えたお金くらいは積極的に支払って下さいよ。

 発表会費も期日までに間に合わない。遅かったり足りなかったり。 

 曲も選んで練習に入って、準備は進んでる。
 承知してるはず。
 発表会シーズンも毎年決まっててわかってるんだから。
 参加費用位、取っておいて欲しかった。



 13年間、何も変わらなかった。





 「コピー代10円がもったいない。」
 生徒が大学生になると母親と同じように雑費をケチるようになった。

 

ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘をつく子供』

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