蝕まれる心

 生徒がレッスンを休む時の連絡方法には、いろいろあるんだけど教室の受付に電話してもらう事が多かった。
 たいてい当日、連絡を受けた楽器店の人が、私の自宅へ知らせてくるというパターン。
 「王子様の静かな反乱」で書いてるように、うちの教室、受付のコーナー閉鎖されてるから、別のセンターを経由して連絡が入ってくる。



 ママが完全管理してるから、いつ行っていつ休むかもママが決めて、もちろん連絡もママが入れる。

 坊やはノータッチ。

 高校生ぐらいまではまあ順調だった。
 それでも1年の内に1回位は知らせが届かず、私は教室で一人ポツンと待ちぼうけ という事もあった。
 坊やが大学受験を間近に控えたあたりから、連絡ミスが徐々に増えていったように思う。
 大学の試験期間は休ませる。ママがね。それはこれまでと同じ。
 でも坊やはもう18歳だから、バイトもあるし、サークル、バンド活動、友達との付き合いも、今までとは行動半径が違う。
 ママが徹底管理したくても限界がある。
 それでレッスン来るのか来ないのか、先生に届かず、待たされるだけって日が出てくる。

 私が困るのは、どちらに責任の所在があるのかハッキリしないこと。

 ママは子供が伝えたと思ってるのか明確に説明しないし、坊やはママに任せきりで、だいたい1度も自分で楽器店に電話を入れてきた事なんてないはず。

 不備があっても責任者が曖昧だと、どちらも謝る必要ないんだよね。
 だから平然としている。
 普通は平気ではいられないよ。 

 例えば友達同士で待ち合わせをすっぽかしたり、約束通りに行かなかったら慌てるよね。少しは動揺するはず。
 でもこの二人にはそういう様子は無い。

 「いつもご迷惑をおかけして。」  
 これはママの口癖。
 心の底から出た言葉じゃない。口先だけの軽いもの。
 いちいち気を使ってられない。他人にはね。

 ママの子供へ望む事。
 経済的に豊かになって、困ることなく生きていってくれ。
 そういう願い。 親心、親の気持ち その大義名分に隠された裏にあるものは「弱者は踏みつぶして行け。」って事。
 ママはこれを体現している。
 



 坊やは優しい男の子だった。
 でも他人を思いやってたら、自分が損をする。
 だから人には手を貸さず 自分の事だけやっていろ。
 人に構うな。人のことは放っとけ。

 そういうママの価値観に、ボクは合わせるしかなかった。
 子供だからね。
 でも合わせてさえいれば、ある程度の甘えは通るしわがままも聞いてもらえる。
 家の中で大切にされる。
 伸び伸び暮らす居場所を得るのと引き換えに、従属を選んだ。
                            

 慣らされてしまうと、得なんだよね。


 たとえ健全な感覚を蝕ばまれたとしても…。

 


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