大学名を言えない子

 年明け、冬の休みも終わり明日からレッスンという日になって、いつものセンター教室から連絡が入った。
 生徒が2ヶ月休会するというお知らせだった。
 受験が追い込みに入ったんだね。
 有名私立大学目指してるんだって、聞いてはいたけど。
 その目標も、もちろんママが決めたものだね。
 目指してる大学の名前を聞いたその時もちょっと「エッ?」と思った。
 …と言うより「ヘ~すごい。」かな。
 上昇志向強いんだなぁ、そう思った。
 普段話してる様子からはママは落ち着いてて、そんなギラギラした感じは伝わってこないんだけど…まあたまにしか話さないからね。





 3月に入り再びレッスンの前日、でも何の音沙汰も無い。
 いつも連絡が遅い。
 こっちも仕事だから教室を使うのかどうかハッキリしないと困る。
 センターに電話しても何も連絡は入ってないらしい。
 仕方ないからご自宅に電話を入れると復会することに…。

 私この時電話したのがまずかったかなぁ、と思ったのは後々になってのこと。
 高校3年のはじめからグレードテスト準備を始めて、ゆっくりではあるけど進んでたし、あのまま保留状態も中途半端な気がしたし、それで連絡した訳だけど。
 それで生徒はレッスン再開することになった。

 変わってしまった。そりゃ年齢と伴に大人にはなるんだろうけど。
 レッスンは不調で足踏み状態。
 荒れてた。
 雰囲気はそんな感じ。


 復会直後、生徒に入学した大学名を尋ねたら答えない。
 「そんないいですよ。言えるようなところじゃありませんから。
 恥ずかしくて人に言えるようなとこじゃありませんから。」

 生徒はそう言った。 私に。

 18歳位の男の子が使う言葉じゃないと感じた。

 それママがこの子に言ったんだね。
 「恥ずかしくて人に言えないから、大学名を聞かれても
 言うんじゃない。こんな大学恥ずかしくて人に言えない。」
 
 そう言われたんだよ。この子ママに。 

                       2005年の出来事


ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘をつく子供』

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