冷血と打算

 君の母親は他人に対して冷淡で、支出を徹底管理して子供を育てた。

 そういう相手との付き合い方を、君は心得ている。
 調子を合わせて受け流す事を学んだ。
 自分もそうなって相手と同調して、家庭での居場所を確保してきた。
 人の気持ちは分かるけど、分からない振りをしてとぼけたり、はぐらかしたりして、自分たちが損をするのを避けてきた。
 
 
 元々高校生の時は大学受験が大切で、そっちに母親の全神経が行ってた。
 入学してからは、今までの延長線上で惰性もあって、坊やも方針転換したいとは言い出せなかったんだろうね。軌道から外れる方が勇気が要るし。
 それにピアノを欲しがってたから、母親との衝突は避けた方が無難だと考えたんじゃないかな。
 利用してるんだよね。息子の方も。
 大人になって、親との関わりに打算が加わるようになる。

 君は平気で嘘のつける大人になり、同時に信頼関係より自分の有益を選ぶ人間になった。



 車に乗って教室に通ってさえいれば、当たりさわり無くやり過ごせる。
 だから気持ちが離れた状態でも続けたんだよ。

 この人にとって、大学での生活はかけがえの無い大切な物。
 誰にも邪魔されたくない。
 うるさい母親の機嫌を損ねなければ全ては順調に行く。
 それがクリアできたら後は適当適当。
  

 バイトで得たお金がサークル活動や交際費に回っていくのは当然だね。
 
 レッスンの事は一歩教室を出てしまえば忘れる。
 その程度の存在。
 そういう習い方をされると、先生は嫌な気分になる。先生は不快な思いをする。
 誰でもそれ位のことは分かる。君も頭では理解できる。
 理屈で分かってはいるが、心情まで思いやる熱いハートは持っていない。
 相手の立場になって、自分がどうしたらいいのかは考えないし、動かない。


 育つ過程で母親に同調し、身に染み付いた生き様だから。

 




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