情けない奴 ~真相~

 母親の意向で気が進まないけどグレード取得を目指している。
 小さい頃からの延長線上でレッスンに通ってると思ってた。長い間そう解釈してた。
 でも微妙に変化してたんだよね。
 新しい別の動機付けが加わるようになってたんだよ。
 
 ピアノを欲しがってたよね。まずその欲しいものを手に入れるには、レッスンを続けるほうが得策だと君は考えたんだよ。
 それからサークル活動。
 これに反対されたり妨害が入るのを避けたい、守りたいという気持ちが働いたんだよね。
 単に渋々習いに来てた小、中学生の頃と違って、自分の中にポジティブな何かがあって、それを守るために習い続ける事にしたんだよ。
 いつからというのはハッキリ線引きできないけど、高校三年のあたりから大学入学後、徐々に。

 そして三人での話し合いが持たれてからは特にそうだね。

 サークル活動は趣味でしかない。あの母親のことだから、グレード取得に向けてのレッスンを辞めてしまうんだったら、活動も認めないとか、攻撃や底意地の悪い嫌がらせめいた事を言ったりしたりするんじゃないかな。
 私の勝手な推測だけど、それくらいはあり得るでしょ。
 充分有りだと思うよ。
 電子ピアノを買ってもらう経緯にしたって、買ってやるからグレードを必ず取得するように、そんな条件めいたものも、ほのめかしてたかもしれない。
 とにかくタダで高額商品なんか購入する母親じゃないから。
 見返りを要求せずに何かをしてやるって、まず考えられない事だからね。



 君はもう引くに引けないところまで来てたのかもしれないね。

 その場その場で母親のボディブローに調子を合わせて来た為に、気付いたらもう撤回は不可能なほど深みにはまってたんだよ。





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