中流家庭の病んだ親子

 嘘をつくのが平気で当たり前になってる息子に、人を教える資格を取得させようとしたり、大學で教職課程を取らせたり、それにいったいどんな意味があるのか?
 もっと大切なことがあったはず。
 一番大切なことが欠けてる。



「粉砕された12年」
 音楽教室で指導している生徒がグレードテストを受けた。
 結果を待ち続ける私に返ってきたのは、「嘘ついてました。」この言葉だった。当日遅刻して失格になっていたのだ。その日のうちに連絡するならともかく、一ヶ月も経ってから、ようやく本当の事を知らせる。

 母親も何も言ってこない。
 私がどれだけテストの結果を気にしてるか、声の調子でわかったはずだよ。「もう悠長なことはしてられない。」私そう言ったよね。本人とじゃ話にならないから、昼間、自宅に電話したんだよ。
 事実を知ったらその場で連絡するのが筋じゃないの?
 携帯電話もそのために持ってるんでしょ?
 受験すらしてなかったなんて。

 この時の一件が、この親子の悪行の集大成。
 二人の本質の全て。
 クレームの電話は素早く、肝心な報告は入れない。
 大切な情報は止めてしまう。
 それで習いに来て、合格に向けて指導しろと要求する。
 自分たちには欠点なんてありませんみたいに澄ましてて、絶対に本音を言わない。本心を見せない。
 人を閉め出して指図だけする。
  
 指図と文句をつけてくるだけで、自分たち二人で勝手に決めて、それで将来合格すると思い込んでる。私のことも指導者とは見てないよね。
 自分に甘く 他人に厳しく 
 それでも通用してきたんだよね。
 
 君は平然としてたよ。あの一ヶ月の間。合否の結果が届くまでは待機状態。比較的自由にレッスン時間を過ごしていい。自分の好きな曲を弾いたり無駄話をしたり、小休止期間だね。君はバンド仲間から着信があったと部屋を出て携帯をかけて話したり、普段はしないことを伸びやかにしていた。
 「嘘ついてました。」その言葉も平然として発するんだよね。



 上級のグレードテストは、都市部でほぼ毎月行われている。
 各楽器店を通さないから、申し込み手続きは生徒個人の作業になる。生徒が動いて報告を受けて 次の手順へアドバイスして進んでいく。
 だから先生はノータッチ。それは有り難いよ。お金立て替えなくて済むからね。
 反面、その都度生徒からの情報無しには、物事は進まない。

 合否の通知も生徒の家へ直接届くんだよね。
 君が初めて受験したとき、待ってる間は毎日気が気でなかったね。
 テスト当日の雰囲気も様子も 君からは何も伝わってこないので、どうしようもなく私はママに電話を入れた。不合格だった場合、項目別の採点結果によって次にどうするかを判断していく。それが無いと、手も足も出ない。保管して教室まで持ってきてもらわないと…

 当日、数分遅れで失格になってた事を、私が知ったのはそれから10日もたってのこと。
 その日からすでに一ヶ月も経過していた。
 ママがその事実を知ったのは、私より一週間前。
 先生として私が一番真っ先に知るべき情報。それが一番あとの、一番後回し。

 わざわざ月謝を払って仕事を依頼しておいて、妨害する。自分で自分の足を引っ張る生徒なんていないよ。小、中学生ならともかく、そんな大人の生徒はどこにもいない。
 嫌ならとうに辞めてる。
 ここまで世界観が歪んでたなんて。

 

 待っても意味のなかった一ヶ月。


 生徒は私の存在意義すら感じてない。
 自分の存在する意味が無いと思った。
 先生としての存在を否定されたら終わり。無意味。
 何のために12年も関わってきたのか。
 あの瞬間全てが終わった。



                  「人の気持ちより現金が大切」につづく


 

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