「人のセックスを笑うな」感想

 この内容で2時間17分ちょっとは長いですね。

 物語は淡々としたラブストーリーでこれといった起伏も無く、結末と言えるようなものもなく、それでも印象に残る場面があり…。

 とにかくカメラが引きのシーンが多く、人物の全身だけで延々と。
 顔なんてハッキリしないから(帽子かぶっていたり、マフラー撒いてたりもあるし)誰が演じてるのかが映画が始まってから結構な時間がたってるのに分からなかったりする。

 だから役者さんは微妙な表情の変化を上手く出した所でそれは通用しない仕掛けになってる。
 怖いね。(笑)
 演じるというよりその人物になってしまわなければいけない。

 またワンカットが長い!

 動かないカメラの前で延々と台詞や動作が続く。

 だからもう台詞という感覚じゃなく、その人に成り切りタイムですね。


 普段ドラマで顔のアップに慣れてるこっちは、いつ表情をよく見せてくれるのかと待つんだけど、なかなか望んだ通りにカットが変わらない。
 ずっと変化しないまま、別のシーンに切り替わったりする。





 考え方によってはそれも新鮮だし、面白い。
 また人物の性格描写も独特で…。
  
 主人公磯貝みるめ(松山ケンイチ)が大学でリトグラフの講師をしているユリさん(永作博美)と知り合い、モデルに誘われ親しくなっていき、積極的な彼女に導かれるまま交際へと発展するが…。

 みるめは学校の職員室でユリさんの住所を調べる。
 手のひらにボールペンで書くのだが、思ったように字がしっかり濃く書けない。
 手のひらは痛いよね。ボールペンの先が、いくら丸くても柔らかい手のひらだし。

 このあたりのちょっと不器用な感じが面白かった。
 近くの適当に白い紙を拝借すればよかったのに。

 そして彼女の家まで行く。
 すると夫、猪熊さん(あがた森魚)がいたのよね。
 応対に出たのは彼女のお父さんと思ってたみたいね。
 そりゃそうだよね。まさかと思います。

 知らずにいっしょにお菓子を食べたりして。

 写真を扱ってる、ほんわかした空気の漂うおじさんで、この人はこの人で妻の恋人だなんて夢にも思わないから
普通のお客さんとしてもてなしている。
 妻が仕事をしている大学の学生さんとして、もてなしている。
 ユリはその場面に遭遇しても動じないし、悪びれる素振りもない。
 「ダンナ。」「あたしの夫よ。」と席を外した間、みるめに答える。



 彼女は自分専用のアトリエを借りている。 毛布に包まりながら「寒い寒い。」とみるめにストーブをつけるよう遠まわしに言う。
 みるめは点かないので変だと思い見ると灯油が無くなってる。
 「そうなんだよね。」と他人事のような彼女。
 
 いつも夫が入れてくれると臆面も無く言う。
 そこのストーブに灯油を入れる役は夫の猪熊さんらしい。

 みるめはあきれてポリタンクを運んできて灯油の入れ方を説明しながら見せてユリさんに覚えてもらおうとする。
 満タンにせず栓を閉める。
 そうすればすぐに尽きて覚えて間がないため自分で入れるでしょう、という考え。

 でもユリさんは笑ってる。
 違うのよ、違うでしょと言いたげに。
 ユリは大人だからそんな事やろうと思えばできるんだよね。
 しようと思えば自分ひとりでもできる。
 でもそれじゃつまんない。
 甘えていいんだったら甘えさせてよね。そんな人。
 お互い頼らず甘えずひとりで何でもするんだったら結婚なんてしなくてもいい。

 ユリさんの夫は、面倒がらずに彼女に合わせて甘えさせてくれる人だということが見えましたね。このシーンで。


 この交際に悩んで、携帯に出ないよう細工したり、みるめの方は真剣モードなんですが、ユリさんはつかみどころがない。



 蒼井優演じる女の子えんちゃんの人物描写も、なるほどって思えるような笑えるようなシーンもいくつかありました。
 映画館のバイトで深夜カウンターにあごを乗せて眠っていたり。
 机の上に反り返っていたり。
 ユリの個展に行ったはいいけど、作品を見ずに入り口の皿のお菓子のほとんどを食べて帰る。
 コタツから出る時、コタツ布団を暖気が逃げないよう降ろして整えたりしない。
 (これはみるめも同じですね。実家での正月のシーンね。)
 廊下のず~っと向こうまで行って姿を消す時、まるで猿か動物みたいに飛び跳ねるというかアクションがあって、まるで野生児のようなえんちゃん。


 ユリさんに負けず劣らず自由闊達な彼女。
 動作というか所作が子供で、変に教育で躾けられていなくて、のびのび育った彼女の土壌がよく分かる場面が多く、なるほどなぁと思いました。
 実家、看板屋なのね。
 それで美大に入った。
 けれど好きな男の子は全く脈がないし、大学の授業も退屈なのね、この女の子にとっては。

 いいなあと思った。
 こういう感覚、本音と建前が分かれていない純粋な女の子。
 世間体とか見栄とかなく、そういう環境でのびのび育ってちょっと行儀悪いけど、裏表のない子。

 それがよく出ていた。 

 美術大学を舞台にしていて個性の強い人達っていうのもよく出てました。



 だからこの先どうなるのかっていうのは分からないし…えんちゃんは堂本(忍成修吾)と付き合う事にするのかなぁ?
 みるめはユリさんをあきらめるよね。たぶん。

 インドを旅してる彼女。
 ひとりと言いながら夫と一緒なんだよね。(笑)
 どこまでも贅沢な彼女。

 でも大人。

 蒼井優との対比でそれはよく分かるように描かれていました。


 自由奔放だけど、大人…なのよね。







監督
 井口奈己

脚本
 永調有香
原作
 山崎ナオコーラ
キャスト
 永作博美 (ユリ)
 松山ケンイチ (みるめ)
 蒼井優 (えんちゃん)
 忍成修吾 (堂本)
 市川実和子 (生徒)
 藤田陽子
 MariMari
 あがた森魚(猪熊さん)
 温水洋一(山田先生)
 三代目桂春團治(じいちゃん)

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