平気で嘘をつく生徒~ズルい保護者

 生徒が上級のグレードテストを受けた。
 結果を待ち続ける私に返ってきたのは、「嘘ついてました。」のひとことだった。
 当日遅刻して失格になっていたのだ。
 その日のうちに連絡するならともかく、一ヶ月も経ってから、ようやく本当の事を知らせてきた。

 母親も何も言ってこない。
 事実を知ったらその場ですぐに連絡して欲しかった。
 携帯電話もそのために持ってるはず。
 受験すらしてなかったなんて。



 上級のグレードテストは、都市部でほぼ毎月行われている。
 各楽器店を通さないから、申し込み手続きは生徒個人の作業。
 だから先生はノータッチ。
 反面、その都度生徒からの情報無しには、物事は進まない。
 合否の通知も生徒の家へ直接届く。
 情報が入らないと先生は立ち往生して身動き取れない。
 
 専門職の私の大切な領域。

 この親子は素人判断で勝手に全部決め込んで。
 専門分野の他人の領域だという事が分かっていない。
 自分で自分の足を引っ張ってる事に気づかない。

 わざわざ月謝を払って仕事を依頼しておいて、妨害する。
 そんな大人の生徒はどこにもいない。
 嫌ならとうにレッスンは辞めてる。

 どうでもいいクレームだけは素早く付けてくる。
 小銭にだけは抜かりがない母親。
 油断もスキもない。

 

 待っても意味のなかった一ヶ月。


 この時の一件が、この親子の悪行の集大成。
 二人の本質の全て。
 クレームの電話は素早く、肝心な報告は入れない。
 大切な情報は止めてしまう。
 それで習いに来て、合格に向けて指導しろと要求する。
 自分たちには欠点なんてありませんみたいに澄ましてて、絶対に本音を言わない。本心を見せない。
 人を閉め出して指図だけする。
  
 指図と文句をつけてくるだけで、自分たち二人で勝手に決めて、それで将来合格すると思い込んでる。
 自分に甘く 他人に厳しく 
 それでも通用してきたんだよね。
 

                   「粉砕された12年」 


                
「上昇志向の果て」 
 これをさかのぼる2年前、2004年の秋に生徒が教室に財布を置き忘れる出来事があった。
 生徒は高校3年だった。

 レッスンが終わって帰宅し、玄関の扉を開けると電話が鳴っていた。
 受話器を取るのが間に合わず切れてしまった。
 着信データを見ると、未登録の携帯電話からだった。

 その後、十数分はたったか再びベルが鳴った。
 
 財布を教室に置き忘れたという生徒の母親からの連絡だった。
 すでに自宅へ戻り、固定電話からの通話だった。

 教室と私の家は徒歩10分ほどの距離。
 仕方ないから「明日の朝見に行きますから。」と通話を終えた。
 


 生徒と親にとって緊急の用件ってこと。
 それは良く伝わってきた。
 もちろん財布は大切だから。

 大切だから、電話した。連絡を入れた。
 自分たちにとって大切なことだけ連絡を入れる。
 相手が情報を必要としてても、自分が億劫に感じたら、連絡しない。

 それがこの親子のやり方。
 人を使いに走らせる時は、何の遠慮も無く、ためらいも無く、しっかりコンタクトを取ってくる。
 一度掛けて不在でも、あきらめずに再度掛けなおす。
 クレームの電話も速くかかってきたけど、この時が一番速かったね。
 超速攻。
 あの未登録の着信は帰宅途中に携帯からかけてきたものだった。



 サイフは現物だからね。
 急がないと紛失してしまう。
 急いだら発見してサイフを取り戻せる。
 でもテストが失格になったことは、どうにもできないアクシデント。
 納めた受験料は返ってこないし、知らせるのを急いでも意味が無い。
 この母親にとって一番大切なのは、そういう現物。
 他人の気持ちは優先順位の一番最後。
 これがこの母親の教育方針さ。
 小さい時から子供に繰り返し刷り込んできた。

 そして見事にそういう男の子に仕上がった。
  


「高所得な一家の奇妙な日常」 
 収入の多い家庭でも、たくさん買い物をすると貧しくなる。
 毎月のローンで手元に残る現金が少なくなる。
 子供に習い事をさせるのはいいけど、近くで済ませずわざわざ車で送り迎えするから、余計、コストが嵩む。
 しかも子供は嫌がってる。
 母親の価値観、世界観が偏って歪んでいる。

「矛 盾」 
 この母親の行動パターンには、客観性の様なものはない。
 自分が金がもったいないと感じたら、出さない。
 レッスンに関わる細かい雑費もそうだし、楽譜に対してもそう。

 全体を見通す力がない。
 超無駄な教室への送迎と、割引にこだわって楽譜を買い渋る行為とが、この母親は自分の中でつながっていかない。
 整合性が無い。
「統一されない素顔」より一部 
 この母親の行為にはつながりがない。
 それぞれが独立した存在で、バラバラに成り立っている。
 確かにひとつひとつを取り上げると、正当な理由が有り間違えてはいない。
 しかし、全体を通してみると理由や動機には何の統一性もない。
 全て自分にとって都合のいいものになってるだけ。

 「統一されない素顔」を参照してください。



ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘を付く子供』の紹介記事でした。


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