会社名を隠す女~中流家庭の病巣

「フェイドアウト」
 もう何もアドバイスすることはできない。
 でもそんなにテストを受けるよう圧力がかかって困るのだったら、先生を代わるしかない。
 それで生徒にそう告げた。そして良く考えて返事をしてと。

 2007年12月、中旬の事だった。 
 年末年始はお休み。
 新年の、明日がいつものレッスンの曜日という日になって、センター教室から連絡が入った。

 「いつもの曜日に来れなくなりました。」というもの。「先生を探してます。」そんなメッセージがあったらしい。
 それで退会するのかどうするのかはハッキリしない。
 1月の末再び連絡が入る。
 結局言葉を濁したままの状態で退会するらしい。
 受付の人がこのまま放置できないから、電話して確認してくれたみたいね。
 私は鍵を持ってるし、それをすぐに楽器店に返却した。

 それっきり。 

 母親からは何の電話も、メッセージのようなものも無い。
 私はとにかく生徒にメールだけは送った。返信ももちろんあった。
 

 そして半年、1年たっても母親からは何も無い。



 それっきり。






「会社名を言わない女」 
 2008年の秋、一度だけ、親子と顔を合わせる機会があった。
 そして母親とは数分、言葉を交わした。

 決まったという生徒の就職先の会社名を尋ねたけど、母親は答えずに別の方へ会話を流してしまった。
 しばらくたってもう一度尋ねたけど、答えることは無かった。
 
 内定した企業名を言わないのは、息子に大学名を人に言わないよう責め立てたのと同じ理由かなぁ。
 有名じゃない会社だから。一流じゃないからところだから。

 たぶん私だけでなく他の人に聞かれても、答えないんだろう。
 ここまで気を許すことなく、ガードして守りたいものって何なんだろう。

 子供が有名大学と一流企業に所属してることでしか、他人と対峙できないとは。

 裏を返せばそれは「自分は一流です」って前提があるから生まれる意識。私からすれば自意識過剰のように思える。
 他人への配慮が一流とはいえない人が何格好つけてるのか。
 習っていた間の先生への態度、姿勢は三流以下だったのに。
 私が味わったのは、人間的なズルさとセコさと冷たさ、それだけ。



 品位を保つどころか、既に欠点をさらし過ぎてて…。
 平気で醜い姿をさらしておいて、自分の子供の就職先は隠す。
 あまりにもアンバランスでおかしい。


 有名大学と一流企業に所属さえしたらいい。後は何でも有り。


 やっぱり価値基準、変。







ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘をつく子供』の紹介記事でした。
 

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