困っている時は知らない振り~ズルい保護者

 「いつもご迷惑をおかけして。」これはこの保護者の口癖。
 心の底から出た言葉じゃない。
 口先だけの軽いもの。
 いちいち気を使ってられない。他人にはね。
 母親の子供への願いは「経済的に豊かになって、生きて行け。」
 親心、親の気持ち、その大義名分に隠された裏にあるものは「他人には親切にするな。」ってこと。
 母親はこれを体現している。
 他人を思いやってたら、自分が損をする。
 だから人には手を貸さず自分の事だけやっていろ。
 人に構うな。人のことは放っとけ。





 この保護者は他人を使ったり、頼み事をする時、相手の情に訴える。
 電話をかけてきて事情を説明するんだけど、それだけで後はどうして欲しいとか、どうすればいいのかとか何も言わない。「申し訳ないんですけど…。」とか「お願いできないでしょうか?」というような言葉を一切使わない。
 困惑したお互いのやり取りがあるだけ。

 結局放っとけないのでこっちが動く。
 人の親切心とか情を上手く使うんだよね。
 自分は言葉に出して頼まず、相手に切り出させる。
  
 そしてそれを、相手が切り出した事なので「私には関係ありません。」と、自分の中で都合よく解釈をして済ませているのだと思う。

 だから逆の立場になった時、知らない振りができる。
 私が困るのを分かってても、或いは後でそれが分かっても、冷たい。


 そうしないと損だから。
 その都度謝ったり、お礼をしたり、プレゼントを贈ったり、いろいろ気を使ってらたきりがない。
 
 出費が嵩むだけだから。                           






「蝕まれる心」 
 生徒がレッスンを休む時は 教室の受付に電話してもらう。
 たいてい当日、連絡を受けた楽器店の人が、私の自宅へ知らせてくるというパターン。  
 「王子様の静かな反乱」で書いてるように、うちの教室、受付のコーナー閉鎖されてるから、別のセンターを経由して連絡が入ってくる。
 母親が完全管理してるから、いつ行っていつ休むかも母親が決めて、もちろん連絡も母親が入れる。息子はノータッチ。高校生ぐらいまではまあ順調だった。

 それでも1年の内に1回位は知らせが届かず、私は教室で一人ポツンと待ちぼうけ という事もあった。
 生徒が大学受験を間近に控えたあたりから、連絡ミスが徐々に増えていったように思う。

 私が困るのは、どちらに責任の所在があるのかハッキリしないこと。
 母親は子供が伝えたと思ってるのか、明確に説明しない。
 何も言わない。
 
 不備があっても責任者が曖昧だと、どちらも謝る必要はなくなる。

 普通は平然としていられない。 
 例えば友達同士で待ち合わせをすっぽかしたり、約束通りに行かなかったら慌てるよね。
 少しは動揺するはず。

 でもこの二人にはそういう様子は無い。
                              




「冷気に包まれた夜」 
 真冬の雨の日、身支度を整えて教室まで出掛けて行って、部屋で待機していた。

 レッスン時間を当に過ぎても生徒は来ない。8時に近づいて休みだと実感する。
 連絡し忘れだね。坊やは関与してないからね。前の週のレッスン時に言い忘れたか、その後来れなくなったのを、母親が連絡し忘れか。どっちにしても待ちぼうけの前後1時間。

 気楽でいいなんて事は無い。
 教室内の点検と戸締りを済ませ、建物を出る。
 冷気が身にしみてくる。

 傘が揺れて水滴がかからないように気をつけて歩く。

 水溜りを踏まないよう冷たい足元を気にしながら帰っていく。



 ほんの少し注意を払ったり、関心を寄せてくれたら、私は走り回ったりせずに済むし、二重手間を避けたり無駄骨を折らずに助かる。そういうことは幾度となくあった。

 こっちが困るのを分かってて、或いは後でそれが分かっても知らない振りをする。

 私には関係ありませんという素振りでいる。



ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘をつく子供』の紹介記事でした。
 

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