劣悪な環境~折れた乳歯

 私たち一家は、借地の4軒長屋のような家に住んでいた。
 両隣と裏手は建物に挟まれて窓が無く、日が差し込まない。
 昼間でも薄暗い、そんな場所で過ごしていた。
 母は仕事で一日中時間を取られ、ゆっくり育児書を読む暇も無かったのか。家に子供用歯ブラシすらなかったと聞かされた。
 だから幼少時、私は歯を磨いた事がなかった。

   *    *    *    *    *    *    *    

 父親には精神疾患があった。
 母親はそうとは知らされず見合いで結婚した。
 父親が再婚だった事も、かなり後になって知らされた。
 前の奥さんとの間には息子がいた。
 
 その奥さんが出て行く時、生まれたばかりの子を渡さなかった。
 父が養育費を払うのを嫌ったためだ。 
 その子は他の場所へ預けられ、すぐに亡くなった。
 病死だったのか、栄養失調などの餓死だったのか…。
 それはハッキリとはしていない。


 母の実家は姉妹が多く、決して裕福ではなかった。
 母は小学校しか出ていない。
 家業のボート小屋などを手伝っていた。
 洋裁店へ働きに出て技術を身に付けた。

 父親と結婚後、家で洋裁の仕事をし続けた。
 注文を受けて仕立てるオーダーメイド。

 工場で働くなら朝は8,9時から夕方は5,6時までと区切りがある。
 だが縫製工場と違って自宅での仕事は時間制限が無い。
 なので朝は目が覚めて、夜は遅くまで手作業の仕事をしていた。
 
 
 私が生まれても保育園には預けなかった。
 保育園に預けるのは金がもったいない。
 そんな理由で、自宅で仕事中も私を側においた。

 母には保育の知識は少しはあったと思うが。
 これだけは確かだが、歯の健康の知識は無かった。

 2,3歳の子はしゃべってうるさい。
 かまっていると手を取られる。仕事が進まない。
 細かい手作業の仕事で神経を集中している。
 それで私の口の中に、長く残るお菓子を常時入れていた。
 キャラメル、ドロップ、チョコレート…。
 何かを食べている時は静かになる。




 簡単に想像はつくと思うが、歯は全部虫歯になった。


 虫歯はもろい。


 ある日、家具に当たって折れた。









 乳歯の上の前歯が全部折れた。





 そしてそれは長くそのまま放置された。



            尼崎の異常な家庭 №1 折れた乳歯


 尼崎の異常な家庭 
 №2 狂った位置~永久歯の異常
 №3 病院を探さない親~強制する習い事

 №4 間違いだらけの治療
 №5 矯正できたのに
 №6 口腔崩壊

 №7 父はギャンブル依存症




この記事へのコメント

この記事へのトラックバック