夫に逃げられた女

 とにかくG先生は遅刻が多いと奥さんはこぼしていた。Gは他のセンター教室でも遅刻を繰り返すらしい。
 先生という立場だと、あまり注意される事がない。受付の人も相手が先生なので、強い言葉では指摘しない。それが慢性化して平気になる。
 時間にルーズ、そして生徒の名前をいい加減に扱う。



 発表会のプログラム製作で、それぞれの先生が自分たちの生徒の名前と曲名を、レポート用紙などに書いて持ち寄る。
 全員の順番を決めるために話し合い、担当した者が下書きをしながら決めて行く。
 持ち帰って清書し、印刷会社に持って行く。
 そういう下準備のために先生方が集まる。

 Gは、3人だけの参加人数でも名前を間違えたと、後で訂正の電話をかけて来る。

 そして翌年は、たった二人だけの参加者だったが、一人の名前は忘れたと言い、もう一人は書いていたが生徒の名前は間違えていた。
 今度はGではなく、私が気付いた。
 (危うく印刷所にそのまま提出する所だった。
 本当に間一髪、油断も隙も無い。)


 間違える事自体おかしい。
 それに忘れる訳はない。
 若年性認知症の訳がない。

 嫌がらせだ。

 とにかく、あらかじめ準備してくるものを全く持たずに、その場でメモの紙切れに薄いシャープペンシルで消えそうなくらいの筆圧で書いて渡してくる。

 「あ、忘れたゎ。」と小さい声でボソッとつぶやく。
 生徒の名前の事だ。

 しゃべり方も、のらりくらりとゆっくりで、ダラ~っとしている。

 完全にやる気がないし、自分の教室とは違う、他人の教室の発表会だから、やる気ないのが見え見えだった。


 G先生と奥さんとの仲は特に良好とは言えない。
 それもひとつの原因だと思う。
 (直営店でのレッスンでGと奥さんは顔を合わせている。お互いライバル心が有るのが見て取れた。プライドの塊で対抗意識を持ってる奥さんを、Gは内心ウザいと思ってたのかもしれない。)
 こういう人は、不満があっても本音を言わない。
 その不満を別の形で出してくる。
 だから余計、質が悪い。

 
 自分の教室の仕事はきちんとこなしてるらしい。
 あきれるよ。

 Gの長女は音大卒業して、後を継いで先生になっているそうだ。
 自宅で教室を開き、自分の子供にも継承する。
 それは大変なエネルギーが要る、一大事業。
 費やす時間も非常に長い。

 Gにとって、その目標以外のものはどうでも良かったのだ。
 どうでもいいものばかり。
 その目標を達成したGにとって他の事は眼中にない。
 緊張感全部無くなって、全神経が解放された状態。

 
 
 元々自分の事だけが大切な人なのだろう。

 他人の気持ちに無頓着。




 家庭が壊れたのも何となく分かる…。

 Gの夫は他の女性と一緒になったのだ。
 選んだその女性は、やはりお腹が大きかったらしい。
 別の男性との間の子供だ。それでもその女性を選んだと。
 奥さんはそう話していた。


 結婚し、次々子供ができても、ある日突然、夫が出て行く。

 それは仕事をして多忙だからからではなく、何かもっと別の理由があるんだろう。

 レッスン開始の時間を守らないのも、人の名前を適当に扱うのも、全て共通している考えと行動だ。

 人の名前も他人の気持ちも、実は芸術性と同じ位、重要だ。

 何か意味があるから存在している。

 その裏に奥深い世界が広がっている。

 それを理解していない。

 怖いもの知らずだ。





 結局、その生徒名前間違いの、Gの態度を指摘して、私は奥さんの教室を辞める事になった。

 

  №1 悪 臭
  №2 月謝取り立て屋
  №3 堂々巡りと損失~欠断しないオーナー
  №4 長電話と先約無視~人使いが下手なオーナー
  №5 散財する妻と節約する夫
  №6 差別意識と村社会
  №7 内容量に合わない大きな箱
  №8 「夜逃げ」と「駆け落ち」の流れ着く街


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