月謝取り立て屋

 月謝の支払いが遅い生徒の家に電話しているおじさんの声が聞こえた。
 「お宅だけですよ。月謝払ってないの。」
 防音のガラス扉のカプセルを一つ隔てた向こう、入口に受付がある。そのデスクの前にレッスン中は必ずおじさん(御主人)がいる。
 少し距離はあったが、何を話しているかは聞こえてきた。

 私が教室へ通い始めて4年目を過ぎた頃の事だ。


 連絡なく生徒が休み、その日がたまたま月謝を受け取る日だったら、生徒の家へ電話をかけ続ける。
 リダイヤルの機能が付いてない電話機だったから、何度か呼び出し音を鳴らしても出なかったら、受話器を置き直して再びプッシュボタンを押す。
 それを30分の間、延々と繰り返す。

 私が辞める前の2年くらいは、もう生徒の数が減ってどうにもならない状況だった。
 だから余計イラついてたんだ、御主人は。
 そこまで生徒が激減したのは私の預かり知らぬ所での話だ。

 

 裕福な家の子ばかりが習いに来る訳じゃない。
 月謝が遅れがちになる生徒もいる。
 おじさんの取り立ての仕方が本当に感じ悪くて、それで辞めて行く人もいたと思う。

 月謝が遅れがちでも、続けてくれた方が結果的には教室の利益になるのに。

 休むからと電話連絡を入れた保護者に食って掛かったらしい。
 たまたまその日が月謝の支払い日だったからだ。
 私の生徒はそれで一人辞めた。
 生徒のお母さんが、こっそりそう教えてくれた。






 その頃、奥さんである先生は、上のクラスの先生(複数)へのお歳暮でひとり、3~5万円の商品券を購入していた。
 奥さんは根回しに大金を使い、夫は保護者に金の催促していた。

                                 つづく

   

  №1 悪 臭

  №3 堂々巡りと損失~欠断しないオーナー
  №4 長電話と先約無視~人使いが下手なオーナー
  №5 散財する妻と節約する夫
  №6 差別意識と村社会
  №7 内容量に合わない大きな箱
  №8 「夜逃げ」と「駆け落ち」の流れ着く街


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