記憶の集合体

 よく傘を忘れる人がいる。
 店を出るときや電車の中や、つい持ってたことを忘れ、置いてきてしまうのだ。
 傘は無くしてもまた買えばいい。
 そんなに大した事ではない。

 雑談や無駄話をしている。
 相手の他愛もない話の中にいろいろなものが登場する。
 それをよく忘れる人もいる。

 傘と同じで忘れてもまた尋ねたらいいし、そんなに重要な事ではない。
 その人の住んでいる場所、好みなど。
 それらは粒になって浮遊する。
 お付き合いが長いと時間の経過とともに粒の数は増えていく。

 ひとつひとつは小さな粒で、有っても無くてもいいように思えるものばかりかもしれない。

 やがて年月を経て、それらはしっかりとした塊になっていく。

 その人の言葉、生き方、価値観。

 その人の人格が生み出す小さな粒が、やがて大きな塊になってある重要なものへと変貌していく。


 それは判断材料だ。
 小さかった記憶の集合体が、その人を判断する材料になるのだ。

 どうでもいいようなものの集まりが、いつのまにか相手の人格、人柄を知るための必要不可欠なものへと変貌するのだ。



 

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