散財する妻と節約する夫

 教室の経営はかなり行き詰っていたと思う。
 御主人はエアコンの電気代を気にしていた。
 防音装置のカプセルは二部屋あって、ホースで大型のエアコンから冷気や暖気を送っていた。
 そのため部屋に空調が行きわたるのに時間がかかる。
 レッスンの始まる1時間くらい前からエアコンを動かす。
 最初、一部屋だけ先にレッスンが始まる場合でも、大型エアコンを作動させ二部屋分を温めたり冷やしたりしないといけない。
 それが一人で30分、二人分だと1時間の差が出る。
 おじさんにとって、それは無駄な空調。
 コストがかかる、効率が悪い、そんな口ぶりだった。

 例えば最初の生徒が休んだとする。
 その連絡が遅いか無かった場合、それこそ本当に余分に空調に時間をかけてしまう事になる。

 生徒が来ないと空き時間ができる。
 その時、おじさんの愚痴を延々聞かされる。
 一か月にこれだけの「電気代がかかる。」と文句を言う。
 だから生徒のレッスン時間もできるだけ空きを作らないよう気を付けないといけない。

 生徒に対しても強い態度にはもう出られない状況だった。
 どんな事をしてもご機嫌をとる。
 そういう強迫観念に駆られてしまった。



 奥さんと御主人は価値観が違って、見ている方向も全てが異質だった。
 この価値観の違う二人と教室で仕事をするのは、大変ストレスのかかるものだった。

 御主人は几帳面で細かいし。
 期日までに月謝が全て集まらないと気に食わない。

 月謝の取り立てが険悪なものになっていた時期も奥さんは、取り立てられる生徒の保護者の気持ちには気づかなかったと思う。
 将来自分にとって有利に動いてくれるだろう人たちとの交流に余念がなかった。


 奥さんが知り合いの先生方の発表会へ出向く時は、必ず大きな花束を持参していた。
 もちろん花があったら嬉しい。贈ってもらえたら嬉しい。
 だけどそれは、必ず見返りを要求しての行為だ。
 自分の存在価値を示すデモンストレーションだ。
 (発表会への心からの祝福、それ以外の意味が大きい。)
 相手も必ず返さなければならない、それを見込んでの贈答、そんな暗黙の了解ができ上がっていく。
 お付き合いとして義務や拘束が生じる。
 『私がこれだけの事をしてあげたのだから、あなたも必ずお返しをお願いね。』 
 そんなメッセージがこめられている。

 見返りのないものには一円も出さない人だ。


 大きなセンターで仕事を得るのが目標。
 
 各先生方へのお歳暮などが半端ない金額で贈られていた。

                             つづく


  №1 悪 臭
  №2 月謝取り立て屋
  №3 堂々巡りと損失~欠断しないオーナー
  №4 長電話と先約無視~人使いが下手なオーナー


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