忘れ物はサイフ

 坊やが教室に財布を忘れたらしく、
 私が帰宅してまもなくママから連絡が入った。

 教室と私の家は徒歩10分ほどの距離。照明を消して戸締りをして、外のシャッターを下ろして再び鍵をかけて、それで家に着いた訳だしこの状態ですぐに引き返してまたシャッターを上げるなんてできないよ。わたしはもう着替えて洗顔した直後だったんだよ。仕方ないから「明日の朝見に行きますから。」ということで電話を切った。
 翌日 教室に行ってみると、すでに楽器店の社員の人が点検に来られていて、坊やの財布も発見済みだった。私はその人に受け付けのあるセンター経由でママに渡してもらうよう頼んで、戻って来た。
 助かるよ。財布なんか絶対に預かりたくない。

 ママはこういう時、人の親切心とか情を上手く使うんだよね。
 支払ってる報酬とは無関係の雑務を頼んだり、自分たちが必要なときは相手の情に訴えてくる。

 だって「財布なんて知りません。自分で勝手に取りに行って下さい。」なんて言う先生は居ないと思うよ。あの状況で。知らん振りできないことを分かってて、電話をしてくる。 
 普段はめったに直接私の家へかけてこないから。 
 ただ電話をかけてきて事情を説明するんだけど、それだけで後はどうして欲しいとか、どうすればいいのかとか何も言わない。
 「申し訳ないんですけど… 」とか「お願いできないでしょうか? 」というような言葉を一切使わない。
 困惑したお互いのやり取りがあって、結局放っとけないのでこっちが動く。
 
 自分は言葉に出して頼まず相手に切り出させる。

 だから感謝する必要はないし、当たり前のような感覚、認識でいていい。
 そういう都合のいい理屈がママの中にあるんだろうね。

 
 用が済んでしまうと、何事もありませんでしたみたいな淡々とした空気に戻る。
 





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