レベルマックスの悪質さ

 この人一番最初の試験で遅刻で失格になってたのを、一ヶ月もの間隠してたんだよね。

 黙ったままレッスンには顔を出してた。何食わぬ顔で。何を指定されて弾いたのかは、適当に曲名を答えたんだよね。でも試験管の人にどんな批評されたのか尋ねたら、「記憶してません。」て答えた。
 その時変だとまでは思わなかった。まさか受験してないなんて夢にも思わないよ。合格か不合格か、気になったけど、当日の様子が全く伝わって来ない。待つだけだったね。
 今までも必要なものを持ってこなかったり、頼りにならない事があったから、念のために採点表を届いたら紛失しないように保管して、レッスンの日持って来るよう母親に電話連絡を入れた。それが三週間目くらいの事だったと思う。
 その後のレッスン日に教室へ入る際、ドアを押しながら私に向かって「気になりますね。」確かかんな感じの言葉を発したんだよね。
 それは気になるよ。当たり前じゃん。でもこの人はどうなの?まるで他人事みたいな口振りだったね。その時も何か変、とまでは疑わなかったよ。レッスンが終わって、車に戻ってから、母親に本当のことをしゃべったらしい。これ以上隠してられないと思ったんだって。
 私が母親に採点表の事を電話で頼んでなかったら、まだ先延ばしにして、うやむやにするつもりだったかもしれない。それで先に母親に告白しておいて、私には連絡しない。
 次の週、やっと本当のことを知る運びになる。

 結局、待っても意味のない一ヶ月だったって事。

 10月いっぱいがそれで、11月には気持ちを立て直すものの、12月に入ると前半だけで後は休むって。
 受験するはずだった日から三ヶ月ものブランク。普通に考えても集中力が途切れるし、テンションが維持できない。この空白は大きかったね。こいつらには何も分かってないんだよ。肝心なところでは知らない振りをする母親。クレーム電話は素早いのに何でこの大事な事をのんびり放置するの。
 あの時もちょっと妙な感じはしたんだよね。採点表の事で電話した時、私、本人が「記憶にありません。」と言ってるみたいな事を告げたんだけど、話の終わりの方で甲高く笑ってた。よく知ってる息子の言動だからね。何か怪しいってその時ちょっと感じてたのかもしれない。だったら息子から打ち明けられた時、携帯で知らせて欲しかったね。
 不在でも何度でもかけ直してよ。
 次の日の昼間でもいい。お母さん、あなたクレーム電話は迅速にかけてきてたじゃない。だからピントがズレてるんだよ。


 「嘘ついてました。」そう告げられた時から世界は変わった。
 あの日を境にね。

 「粉砕された12年」や「ろくなもんじゃねぇ!!」で何度か公開してきたエピソードだけど、この一件で世界は変わった。それほど決定的な出来事だった。


 休む事を連絡し忘れたり、発表会費が遅れたり、その他の様々な細かい事は仕方ないなで受け流してきた。
 ストレスやイライラを募らせる事でも、大切な生徒だからやり過ごしてきた。
 でもこれは違う。
 次元が違う。
 それまでの失礼な態度や無頓着さやいいかげんさとは全然違うレベルの事。
 

 それに気づいてないんだよね。この親子は。
 その時も。おそらく今現在も。





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