またお金の文句

 教室に入ると営業の人から伝言メモがあった。
 生徒が電子ピアノ購入したそうで、「接続機器の清算がまだ済んでないので、今日受け取って封筒に入れて規定の引き出しに入れて置いて下さい。」とのこと。
 生徒はこの時大学2回生だった。
 高校3年の時 ピアノを購入する話が出てはいたけど、いつの間にか立ち消えになってて、私もそのことは忘れていた。

 当時も営業の方からのメッセージとパンフレットなどが、何週かに渡って部屋に置いてあった。
 楽器は高額商品。購入してくださる生徒も親御さんも大切なお客様。
 そんな感じがよく伝わってきた。
  
 生ピでなくて残念だけど、やっと買ってもらえたんだ。
 ピアノ欲しがってたからね。
 私はその日はじめて購入された事を知ったんだけど、たぶん何週間か前からそういう動きはあったんだと思う。
 生徒は私にはそういう話をしなかった。
 まあ事前に知らせる必要はないんだけど、全く話題には上らなかったから唐突に感じた。






 その日珍しく、生徒と一緒に母親が教室まで足を運んで私と顔を合わせた。
 そして私の耳に飛び込んできた言葉がこれだった。

 テストの事やなんかで雑談中、 
 「受験料、わっ見たら9000円もするの。高いわ~。 
 いくらお金がかかると思ってるの~?出してくれる~?」
 
 そう息子に向かって言い放った。



 母親はこれを言いたかったんだ、私に。 



 自分の子供を挟んでね。ワンクッション置いたら言いやすい。
 受験料なんて準備を始めた2年前に、テスト要綱を買って読んでご存知のはずだから、わざわざこの場で言う必要は無い。本来ならね。
 それをわざわざ言うって事は、私への文句以外の何ものでもない。
 息子にならいつでも言える。家でも車中でもね。

 「ほんとに高いわ。嫌になるわ。
 たかが音楽の試験に…バカらしいわね~。
 何とかしてよね。ほんとに。」

 それに続く母親の声が聞こえてきそうだった。

 どこの保護者が先生の目の前で金の御託を並べる?
 しかも上級グレードで。 

                 「発言は最低ランク」(2006年の春)
 



 (このお母さん他の先生にも同じようなこと言ってるんだろうなぁ。
 妹も弟も習ってるし…。
 怖っ!)






ノンフィクション
『エリート志向の闇~平気で嘘をつく子供』の紹介記事でした。


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