内容量に合わない大きな箱

 そんな個性の強い夫妻の経営する教室だが、私が入る10年以上前は生徒が100人を超えていたらしい。
 凄い人数だ。
 そういう過去の最盛期の栄光、輝きのようなものが御主人や奥さんの感覚を鈍らせてたのかもしれない。
 
 生徒を減らさない事を優先順位の一番に持ってくれば事態は違ってたと思う。

 出身大学やグレードにこだわるから変になる。
 教えるの好きな先生を採用するだけで良かった。
 そういうシンプルな事で良かった。



 私が入って4年目を過ぎるあたりには生徒が減り過ぎて、もう収拾つかない状態になっていた。

 クラブ活動や塾通いで辞めると申し出る生徒に対しては、引き止めにかかる。
 おじさんが電話口で1時間近く説得するらしい。
 そういう生徒の場合、月謝の支払いはいいのだ。

 G先生の紹介で入ってきたU先生も生徒が減ってしまい、バイトをしてると聞いた。
 次の生徒が来るまでの待ち時間も長くなると、充実感より疲労感に襲われる。
 すでに深刻な状態に突入していた。

 もう手遅れに近い生徒減少の末期症状だ。



 見栄を張り過ぎた。

 先生同士の対抗意識が余計、自分たちの首を絞める。
 
 教室に他の先生を紹介し、自らもお手伝いに来ていたG先生。

 G先生の教室の発表会は、出演する生徒の数と開催する会場の大きさが合っていないと奥さんは話していた。
 客席に人がまばらで、あれでは寂しい、閑散としていると。
 抱えてる生徒人数が減ると、当然、発表会参加者も減る。
 だけどこれまでと同じ大きなホールを借りて行うのだ。
 生徒減少という変化する状況に合わせていく事ができない。

 プライドがあって変えられないのだ。

 小さな会場を借りる、規模を縮小するのはプライドが許さない。

 だから参加人数が少なくても、これまでと同じ大きなホールを借りて行う。
 参加人数が少ないと集まる会費も少ない。
 大きなホールの会場費で収支のバランスは崩れる。
 そんなG先生を見てはいても、結局奥さんも小さなホールに転向する事はできない。

 クオリティーの全てにこだわりがあるのだ。
  


 おじさんは経費節約で花を置くのを止めようと言い出す。
 もちろん奥さんはそんな意見は聞かない。
 おじさんは発表会なんて2年に1度でいいとまで思ってる。
 とにかく経費節減がおじさんの第一目標なのだ。




 いったいどっちの意見を聞いていいのか分からない。
 どちらがオーナーなのかハッキリさせて欲しいと思う事もあった。

 価値観も意見も正反対の夫妻だった。

 おじさんは50歳前後で自営業の店をたたんで、奥さんの音楽教室の受付、経理担当になったようだ。
 奥さんは電話番と受付業務なんて大学生のバイトを雇うつもりだったらしい。
 でもお金を扱うのは他人に任せられないとおじさんは反対して、自分が引き受ける事にしたと。

 夫婦で同じ仕事をするなんてやり難いと思う。
 価値観が違う物同士だと余計に。


 私には二人が、お互い足を引っ張り合ってるように見えた。
 同じ仕事をするのがやり辛いように見えた。


 (Gは3人目の子供がお腹にいる時、夫が家を出て行ったそうだ。
 自宅がピアノ教室だとプライベートの時間がつぶれる。妻の仕事は夕方以降、家族の団欒の時間帯だから。ピアノの音色が鳴り響くし、練習中の音はかなり聞き辛く神経に触る。
 それでも仕事をセーブせず、加えて3人目の子供も欲しがった。
 Gも基本的に強欲だと思う。)
  

 
  №1 悪 臭
  №2 月謝取り立て屋
  №3 ヘンテコオーナー
  №4 ビジネス下手
  №5 散財する妻と節約する夫
  №6 差別意識と村社会


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