映画「インセプション」感想

 新幹線に乗っている間の夢。
 飛行機に乗っている間の夢。
 
 人がもっとも無防備になる夢を見ている間に、潜在意識の奥深くに入り込み、貴重な情報を盗む“エクストラクト”。この危険な技術で世界最高の腕を持つ産業スパイのコブは、反対にアイデアの芽を潜在意識に植え付ける“インセプション”の依頼を受ける。このほぼ不可能とされる任務を成功させるため、コブは世界中からメンバーを厳選し、最強のプロフェッショナル集団を結成する。だが彼らがいくら周到に計画を立てようが、どれだけ優れていようが、計画を根底から揺さぶる“敵”の存在を、コブはひそかに感じ取っていた…。
(あらすじ goo映画より)


 映画の序盤から「夢」の3段重ね。
 夢のミルフィーユ状態ってそんなん有り~!?って感じ。

 分かり辛い。^^;

 解説無しには理解できない作品。
 一回見て分かった人は凄いと思う。



 主人公、コブが物語の現実の中で移動した場所ですが、
 京都で新幹線を降りて、東京でサイトーとヘリに乗って飛行場へ。
 それからブエノスアイレスに渡り、アリアドネを紹介され、
 モンバサへ行ってイームスに会い。ユスフも加わり計画を練り。
 仕事はシドニー発、ロス行きのファーストクラスのシートでした。  


 ジャンルはSFファンタジーとあります。驚異の映像とアクションシーン、カーチェイス、銃撃戦など見所満載でした。ただ印象としてはサイコスリラーの色合いが濃厚で、心理劇がより強烈に迫ってきました。

 他人の心の中を見る怖さですよね。
 覗き見しなくてもいいものを、見てしまうような。




 映画の最初から夢が幾層にも重なって…。

 サイトーとコブ、アーサーが金箔の襖の部屋で食事をしている。
 日本なのか中国なのか分からない東洋風なインテリア。 
 その世界にモルが現れる。
 金庫から封筒を取り出したコブだが、サイトーに見つかる。銃を突きつけられ、モルも銃を構えて隣にいる。
 捕まったアーサーが連れられて来る。
 そのアーサーにモルは銃を向け、そして彼の足を撃つ。
 再度、足に向け引き金を引こうとするモル。
 コブは阻止するためにテーブルを滑ってアーサーの額を撃ち抜く。
 夢の中でも痛みを感じる。
 しかし死ねば目が覚め、痛みは関係なくなる。
 コブはアーサーを痛みから開放するため致命傷を与えた。

 また、コブはアリアドネを仕事に誘い、試験的に夢の中で町を散策している。
 するとモルが現れアリアドネを刺してしまう。

 それからロバート・フィッシャーがターゲットの夢の第3層。
 そこにもモルが兵士の格好で現れる。
 今度は銃でロバートを撃つ。




 度々現れる潜在意識の中のモルは冷血で残酷。

 彼女は夢の中で次々と人を撃ったり刺したり傷つける行為に出る。

 コブの中にいるモルは他人を攻撃する。
 しかしコブを傷つける事は無い。
 自分とコブ以外の他人を排除する。
 それは潜在意識の中のコブ自身がそうだからなのか?


 二人で夢を共有して、深い深い二人だけの愛の世界に潜っていったコブと妻のモル。



 二人以外のものは必要のない世界。
 夢の中ではそれが可能になる。
 現実の社会と関わって生きていく必要がない。
 そうやって50年も過ごした彼ら。
 夢から抜け出て現実に戻ろうとしなくなった彼女。

 夢から醒めるために、コブとモルはレールに横たわり列車に轢かれた。しかし現実に戻ったモルはその世界こそが夢だと思い込んだ。
 そして夢から醒めようとしホテルの窓から飛び降りた。

 コブが彼女の潜在意識に、ここは夢の世界だと植えつけたからだ。
 現実に戻るには死ぬ以外ないと。
 夢から醒めてもその考えは残り、彼女の意識を支配し…。 

 そのためコブは罪の意識に苦しみ続ける。




 彼の苦しむ理由は分かりました。
 怖いと感じたのは現実から戻るために選んだ死に方です。
 レールに頭を乗せてましたよね。
 二人は向き合い、コブから見て妻の頭の向こうから列車がやって来た。
 つまりモルが先に列車に頭を惹かれる状況。
 いくら夢の中とはいえ、凄惨な死に方です。
 画面いっぱいに振動する金属と土のシーンが数回、断片のように入ってきます。レールですよね。横たわった状態で見たレールです。
 なぜここまで恐怖に追い詰められる死に方を選ぶのでしょう?

 夢の中だから…?
 そう、夢の世界を描いたために、作者が自分の心の中を無防備にさらしたと受け取っていいでしょう。
 
 現実を描く場合、制約があります。
 けれど設定が夢だからなんの制約もありません。
 自由になって心の底の願望が形をとって現れたのです。
 これが作者の癒しであるのかもしれません。 

 愛と憎しみは表裏一体。
 女性に対する愛憎の深さですね。

 愛する女性の頭を先に砕く主人公。
 恐ろしいものを見せられてしまった。そんな気分です。

 病んだ主人公、コブの私的な世界が延々と描かれる作品。

 


 愛とは何なのか?



 
 モルは夢だと思い込んでいて建物から飛び降りる訳だけど、その前に部屋を荒らしておき、自分の命が狙われてるなどと手紙を弁護士に送ったりしてます。
 かなり周到に準備していますよね。
 後に残ったコブを陥れるような策略。
 そのためにコブは妻殺しの容疑をかけられ、指名手配になります。
 「夢」の中の夫なんだから、ほうっときゃあいいのに、そうはせずに追い詰めます。陰湿な性格の女性として描かれている妻。

 病んだ精神世界ですね。
 それも愛のなせる業なのか。
 


 心理サスペンスはじわじわ来ます。怖いです。





 
 もうひとつ葛藤のドラマがありました。
 ターゲットになるロバート・フィッシャーとその父親。
 
 コンプレックスや愛されなかった孤独感を抱えたままだった息子。
 厳重な金庫から出てきたのが風車。 
 子供の頃の思い出に触れるものですよね。

 モルがインセプションによって「夢から覚めるには死ぬ以外にない。」
 というマイナス思考で悲劇的な最後を迎えました。

 それを避けるにはポジティブな意識を植え付ける事が重要。
 「自分らしく生きる。」
 父親の模倣をせずに自分のやり方で歩いていく。
 そういうヒントを与えられたロバート。

 彼が自ら考え行動し、結果としてライバル会社の願った事と一致すればいいという。
 非常に間接的な働きかけでした。
 人の意識を操作するのは罪だけど、「人への愛」が有りました。
 コブとモルがドロドロしてる分、こっちはホッとしましたね。
 (金庫の暗証番号528-491ってホテルの部屋番号と同じだった。
 この数字に何か意味があったけ?)
 







 ところでキック(衝撃)で目が覚めるという決まり事があり。

 夢の中で怪我をして死ぬと目が覚める。ただロバートのミッションの時はこれが通用しないんですね。
 (原因は睡眠剤の強さらしいけど…。)

 これがあるために、ラストの解釈の仕方が大きく違ってくる。

 どちらにも受け取れるラストでスッキリしなかったですよね。
 わざとこんな風に終わってるんだ。
 ハッピーエンドとしてもっと正々堂々と幕を下ろせばいいのになぁ。


 屈折してますよね。






 夢の中でも死ぬと駄目。
 夢の中の上の層から衝撃があると目が覚める…。

 だけど終盤、アリアドネは虚無の世界でポーチから落下し。
 同時刻に上の層、雪山で病院が爆破された衝撃で目覚め?

 ロバートは撃たれて虚無の世界まで行った。
 戻ってこれたのは電気ショックの衝撃があったから。
 上の層からのキック(衝撃)がなければ、戻れないんですよね。

 第1層から第3層までキックのタイミングを打ち合わせてた。
 時刻を合わせて次々とキックして目覚めていくように。

 しかし第1層でコブは目が覚めず、沈んだ車の中に残った。
 脱出して川から上がってきたアーサーはコブは「戻ってこれない。」と言っている。アリアドネは戻ってくると言い。
 虚無へサイトーを迎えに行ったコブはどうやって覚醒したんだろう?
 銃があったからそれでサイトーを撃って自分も…。
 死んで夢から覚めたんだろうか?
 場面は急に到着間近の飛行機の中へと変わるし。

 このあたりのクライマックスシーンが分かり辛い。

 家へ着き、子供たちと再会を果たすコブ。
 現実なのにトーテムの駒を回すのも変だよなぁ。

 あれがもしコブの夢だったとしたら、いったい夢の第何層?
 最下層の虚無の夢の世界から、また別の夢へ移動できる?
 一度目が覚め、現実に戻ってから改めて眠りについて夢を見るんですよね。普通は。


 やっぱりハッピーエンド…ですよね。






 エディット・ピアフの『水に流して』(Non, je ne regrette rien)♪
 良かった~!


キャスト
レオナルド・ディカプリオ (Cobb)
エレン・ペイジ (Ariadne)
マリオン・コティヤール (Mal)
ジョセフ・ゴードン=レヴィット (Arthur)
渡辺謙 (Saito)
キリアン・マーフィ (Fischer)
トム・ハーディ (Eames)
トム・ベレンジャー (Browning)
マイケル・ケイン (Professor)
ディリープ・ラオ (Yusef)
ルーカス・ハース (Nash)
タルラ・ライリー (Blonde)

スタッフ - インセプション
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
製作国・地域: アメリカ 上映時間: 148分

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